その6 「清き一票」




「よっしゃあ、今日はゲーセンに行くぞ!」


「そんなまた急に。まだ25日前だからお金ありませんよ」


「何言ってんだよ、金なんか使わねーよ」


「え、じゃあ、ゲーセン行って何するんですか?」


「金を使っているやつを見に行くんだよ。楽しいぞー。
UFOキャッチャーとかなんかで、あともう少しで取れそうな景品を
もう何千円も使っているから止めるに止められなくなって
次から次へとどんどんどんどん金を使っているやつとか


「(最悪だ……)」


「あとな、音ゲーとかを見るのも面白いぞ」


「かげろーは音ゲーするの?」


「あー、あんなん無理無理。それにな、音ゲー見るっつっても普通に上手い人のを見るんじゃねーぞ」


「というと?」


「すんげえノリノリでダンスダンスレボリューションと見分けがつかないくらいポップンミュージックしているヤツとか
今にもスティックが折れそうなほど力強く必死で叩いてドラムマニアしているヤツとか
オートバスなのにも関わらずオレドラムできるんだぜヤッホオイ!な顔してドラムマニアやっているヤツとか。
こういうのは見ていて飽きないぜ!」


「あんたいっつもゲーセンに行ってたのはそんな目的だったのね……」


「音ゲーに関して言えば、クラッシャー行為以外ならいくらノリノリでやっていても、
自慢するようにやってても、それは個人の自由ですしね。それを見る方も個人の自由。
でもゲーセンも(一応だけど)やっぱり公共の場ですから、激しく強く叩いたりするのは止めて欲しいですね」


「でもさ、かげろーだってゲームはするでしょ?」


「おう、するぜ!」


「いつもは何してるの?」


「そうだな……、レーシングゲームとか、格闘ゲームとかよくやるぜ」


「そういえば、最近新しいレースゲームも稼動しましたよね。CだかGだか」


。頭文字D」


「でも格闘ゲームとかもできるんだね。すごいなー」


「おう。けっこう得意な方だぜ。
この間は乱入した相手があっさり負けて怒り狂ってリアルファイトに突入したけどな!」


「ちょっと、そんなことして警察にやっかいになったりしてないでしょうねぇ」


「おう、その辺は大丈夫だ! サツにチクったらおまえんち燃やすって言っておいたからな」


「……(燃やすって、冗談に聞こえないから怖いなぁ)」


「他にもな、オレが――」







コガネシティ町民の皆様、こんにちは。


こちらは、町議会員候補 ぬささめ、ぬささめイーブイでございます。


ラジオ塔改造計画促進を根底に、皆様の生活の充実をお約束いたします。









「おっ、なんだ?」


「選挙カーですね」


「そういえば、もうすぐね、町議会員選挙」




常に向上心を! ぬささめ、ぬささめイーブイでぇございます!


ご声援、ありがとうございます! ぬささめ、ぬささめイーブイでぇございます!!!


コガネシティの皆様に、明るい笑顔を! ぬささめ、ぬささめイーブイでぇございますぅ!


ぬささめ!!!! ぬささめぇ イィブゥイィでぇえございますう!!!







あー!!!! うるせえええええ!!!



「確かにこの宣伝はやりすぎな気が……」


「でも宣伝っていうのは、相手に印象深く残れば勝ちなんじゃないかな」


「確かに、それは一理あるわね」


「しかし名前だけとにかく言えばいいと思っているような人には一票を入れられませんね。
しっかりと自分の意見を言わなくちゃ意味がないです」


「それでも、言うだけ言っておいて、結局町議会員になっても言ったことやらない人とかいるよね」


「選挙権は昔、いろんな人たちが平等を一生懸命訴えてやっと勝ち取ったものなのよね。
だから一票を入れる人たちの意識の向上も必要だけど、やっぱり立候補者も言っただけのことはやってほしいわ」





「よし、オレが町議会員になってやっぞ!!


「ええええええっ!」


「ぜっっっっったい無理ね」


「見栄ははらないほうが楽に生きれるよ」


「町議会員になって選挙カーでの宣伝を禁止してくる!!」


「そんな理由!?」


「じゃあ、僕一票入れるー」


「あのねぇ。町議会員になるにはまず、選挙宣伝のためのお金やら何やらが必要なのよ。
人望も厚くなくちゃできないし、きちんとしたマニフェストも出さなくちゃ」


「ま、まにふぇすと? ……ああ、工場制手工業な」


「それじゃあ、マニファクチュアじゃない! そっちの方が難しいわよ!」


「このたびはーぬさもとりあえずたむけやまー
紅葉の錦、神のまにまにー」


「……」


「……それは百人一首!! 最後しか合ってないし!!
……ちょっと考えちゃったじゃない!!」


「(ものすごいボケだ……)」


「(それにツッコミを入れるらいちもすごい……)」


「要はあれだろ? 町議会員になって、町民のために何をするかを言えばいいんだろ?」


わかってるんだったらボケるな!





「じゃあさ、『金銀リメイク案推進派! コガネの街に再び栄光の日差しを!』ってのはどうだ?」


「なんだか根本的に間違っているような」


「まぁ、マニフェストだけ出しても所詮お金のない私たちには無理なことよ」


「そうだねっ」


「いいや、25日さえ来れば25日さえ来ればなんとかなる!!」


「あんた、そんなこと言って勝手にお金使ったらタダじゃおかないわよ」


「い、いやいや、そんな町議会員選挙立候補のために貯金するとか言って
ゲーセンで遊んでくる金をみんなから騙しとろうなんて、そんなことオレが思うわけないだろ!!」


「(全部言ってる……)」


「(全部言っちゃった……)」


「(そもそも騙し方がおかしいのには突っ込まないで良いのかな……)」


「ぜるる、あとで水攻めするからそのときよろしくね」


「ま、待て、らいち!
そ、そんな麻痺させてからオレを密室に閉じ込めて水攻めしようなんて、そんなことはやめたほうがいいぜ!
いやいや、ほ、本当だぞ! それにオレはクラボの実もイトケの実も持ってるからな!
そ、そんな水攻めなんて怖くないぜ!」


「ぜるる! はたきおとす攻撃よ!」


「馬鹿なっ! ブイゼルははたきおとすなど覚えな……いてっ! っていうか、なんからいちの雰囲気がいつもとちが」


「今だ! 電磁波!!」


「うぎゃっ、し、しし、しびれるぜ、べいべー」


「……(これはコントでやってるんだろうか……、それとも……)」




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