その5 「i」





「そういえば、フロートのお腹ってぽっこりしてるよねー」


「な、なんですか、急に。この頃運動不足なんですよ。
運動しようにも何をすればいいか……」


「腕立てしろ、腕立て! 運動ってのは毎日の積み重ねが重要なんだよ」


「おお、かげろーが珍しくまともなコトを言ってる」


「おう、オレはまともだぜ!」


「(バカにされているのに気づいていない……)」


「でも毎日毎日腕立ては面倒くさいです」


「ばっきゃろー、おめぇ! んなことでメンドくさがっててどうすんだよ!
そんな腑抜け野郎はそのうちに筋肉がどんどん衰えていって
次第にぷんぷんぷんぷん腐り始めて、仕舞いにゃあベトベトンになるぞ!


「えぇぇぇっ!? そんなことあるわけないじゃないですか!!」


「……そ、そんなことあるわけない……ですよね?」











「そーいえばさ、最近のカラオケってi消費量とか出るんだよね。
フロートのダイエットついでに歌いにいこーよー」


「おお、それはいいな! 楽しみながら運動になるな!」


「えぇ、でも僕最近の曲とか知らないですよ」


「何が歌えるのさ?」


「えと……。北酒場とか」


「細川たかしって……渋いな、おまえ。演歌かよ」


「いいじゃないですか! どうせ僕はカートゥーンとか歌えませんよ」


カトゥーンな。KAT-TUN」


「演歌でもなんでもいいからとりあえず行ってみようよー」








「はぁ……」


「どうしたよ、らいち? 似合わない溜め息なんか吐いちゃって。
なんだおまえ、溜め息でもしたら悩める素敵な乙女になるとでも思っているのか」


「うるさいわね」


「あんたには関係ないから、あっちにいってなさい」


「んだよ、それ。……ん? 後ろに何隠してんだよ」


「あ、あ、あ、ちょ、ちょっと、やめなさいよ!」


「体重計ぃ? ん、ちょうど記録された重さが残ってるな。
どれどれ……。……三十はt


「それ以上言ったらブッコロスわよ」


「うおー、こええな。……でもライチュウって確か標準体重は30`cだったような気」


「あれ、ぜるるたちどこに行くの!!」


「……」


「あ、らいち。今からダイエットしにカラオケに行くんだよ。らいちも行く?」


「やめとけ、ぜるる。
こいつの場合、魅力的な部分といえばこのぷにぷになお腹ぐらいだから
これ以上こいつの魅力をとらないでやってくれ」


「何言ってるのよ! 行くわよ、行くわ!! 忌まわしきゼイニクとの戦いよ!!!」


「おおお、らいちが燃えている」










――カラオケ内――



「さて、まず誰が歌う? やっぱりオレだよな


「待ちなさいよ。あんたがマイク持ったら永遠に返ってこなさそうだわ。まずは私からよ」


「えー、僕一番がいいなぁ」


「待て待て、そんなに言うならジャンケンで決めようじゃないか」


「ダメ。それは絶対ダメ。私が絶対的に不利だわ


「じゃあ、浮き輪をしている人から先ということで」


「そんなのおまえしかいねぇよ」


「きたぁーのぉー♪ さかばどおりにはぁー♪」


「っておいいい!!! 何勝手に入れてんだよ!


「は、早い……!!」


「(フロート……あんた、実は何度もカラオケに……)」


「おんなをぉ♪ よわせるこいがあるぅー♪」


「ふふふ、早い者勝ちですよ」


「んだと! だったらオレだって!」


「僕もー」


「わ、私だって」








――一通り好きな曲を歌い終えて――





「しかし、暑くなってきたわね……」


「そうか?」


「っていうか、あんたのその炎が暑苦しいのよ! 消しなさい!


「んなっ。何言ってんだよ!
この炎がなくなるとな、バクフーンは死んじまうんだぞ!


寝てるときとかいつも消えてるけどね


「ぜるる。お前、知らないのか。寝ているってことは目を閉じている。
目を閉じているってことは意識がない。
つまり意識がないってことはな、死んでるのと同じことなんだぞ!


な、なんだってー!


「そんなキバヤシもびっくりな屁理屈並べないでください」


「そうよ。アンタね、ぜるるに嘘を吹き込まないでくれる?
ぜるるは本当に信じるクセがあるから」




「とりあえず、本当に暑いから冷房つけましょうよ」


ダメ、ゼッタイ


「何よ、そのどっかのポスターみたいな否定の仕方は」


「今の温度の方がいいだろうが。むしろ暖房をつけろ、暖房を」





ピッ






「しまった! エアコンのリモコンはかげろーの手元にあったわッ!!」


「へっへっへっへ、このリモコンがある限りオレはこの室内の帝王となるのだ!」


「ならねえよ、返せっ」


「イヤだね! ほれほれほれ」



ピピピピッ




「ちょ、ちょっと! 暖房の温度を30度に設定するのはヤメなさい!!」


「やなこった!」





「あーだこーだあーだこーだ」







「あー、ダメだ……。暑くて溶けそう……」


「じゃあ、溶けていればいいんじゃない?」


「それもそうですね(あれ? いつの間に脱いだんだ、浮き輪……)」











「ちょっと、かげろー! いい加減しなさいよ!!」



「ふわぁ、これの方がラクですねー」


「きゃあああああああ! フロート! あんた、下半身が溶けてるじゃない!!
かげろー、あんたのせいでフロートが溶けたわよ!!


「うぉっ!! フロート大丈夫か!?
待ってろ、今ルージュラ呼んでくる!


凍らせて固めるな!!
















――いろいろ騒動があってからカラオケ終了後――




「はぁ……。なんだかムダに疲れたわ」


「そうかなぁ? 僕は楽しかったよ!」


「カラオケは4人ぐらいがちょうどだと思うけど、
行くメンバーによっては3人ぐらいでもちょうど良いかもしれませんね……」


「まぁ、状況に応じて対処が一番、だな!」



「(オマエが言うな……)」


「(かげろーが言ってどうするんですか……)」




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