その9 「酔って酔わされ酔いながら」

後編














「あのね、私、前から……
 かげろー君のことが……」


「?」


「す……す……



 好きだったの!!!」


「……俺もだよ、キュウコン」


「う、嬉しい!!
 ありがとう、かげろー!」

















チュッ……
















「うわあああああああああああああああああああああああああ」


「どどどどどど、どうしたんですか!!?」


「あっ、な、なんでもない……」


「あまり悪い方へと考えない方がいいですよ
 一度悪い方に行くと、どんどん悪くなっていきますからね」


「……うん。ありがと


「(そんな小さい声で言われるとまた照れますね……)
 しかし、結局見失ってしまいましたね」


「キュウコンがものすごいスピードでかげろーを連れて行ったけど、あれは何だったのかしら……」


「もう、本当に辺りも暗くなってきちゃいましたし……、
 あまり遅くなりすぎてぜるるに心配かけてもまずいですしね」


「はぁ……
 仕方がないけど、そうよね。ぜるる一人じゃ可哀そうだわ」


「それじゃあ帰りましょうか……」














「ぶええええええくっしょん!!!」


「大丈夫? お姉ちゃん」


「ぶええええええくっしょん!!!
 うー、大丈夫よ。
 ……でもくしゃみって噂された本人が出るもんじゃなかったかしら……」


「?」













――とある居酒屋





「でさー、その男がさー、私になんて言ったと思う?」


「(この話5回ぐらい聞いてるぞ……)
 な、なんて言ったんですか?」


「暑苦しい女はいやだ、ってほざきやがったのよ!!!!!
 んなこと言われても知るかー!!!! うきゃー!!!!!!!!!」


「(やばい、どんどんエスカレートしていってるぞ……)
 あ、そろそろ良い時間なので俺はk」


「でさー、その前の男もさー、私のこと暑苦しいって言いやがるのよ!!!
 そんなの炎タイプだから仕方ないじゃんねー!!!!? ぎゃははははははははは!!!!!!」


「(と、突破口が……突破口が見つからない……!)」


「うっひゃっひゃっひゃっひゃ、まだまだかげろー君じぇんじぇん飲んでないじゃないのよ!!
 ほらほらほらほらほら、飲め飲め飲め飲め飲めー!! あはははははは!!」


「う……うぅ……」


「あああああああん? 私が、注いだ、お酒を、飲めない、って、言うのかぁぁぁあああ?」


「(か、絡み酒だ……!)
 い、いえいえいえいえ、でも、ほら、もう時間的にもまずいと思いますし、
 ね? ね? 姐さんだって、あまり飲みすぎてもあとが大変ですし、ね?」


「うぃー……、しょうがないねー、かげろー君がそう言うんだったら」


「(よっし……!)」


「あと一本飲んでから帰るかー!!!!」


「……」


























「(……あぁ、やっと外に出れた!!)」


「うぃー、ひっく
 もー動けねーぞ、てんちょおおおお!!! うひゃひゃひゃ」


「ちょ、ちょっと、姐さん、歩けますか?」


「ああああぁぁん? 誰が暑苦しい雌狐だってぇ?
 お前のことおお、化かしてやるぞおおおおお  うへへへへ」


「ちょ、ちょっと、こんなところで座ってたら邪魔になりますっすから。
 あ、あっちの電柱のところまで行きましょう」


「うひゃひゃ、かげろーきゅん、あんた、気が利くねえ あはははははは
 じゃあおんぶしてくれぇぇえい」


「(とにかく酔いが少しさめるまで待った方がいいな……)
 よっと、あ、姐さんって結構軽いですね」


「うへへへ、体重管理はきちんとしてるんだぜ、うへへへ」


「へぇ、そうなんすか」









「……」




「……」




「……」




……かげろー君の背中……暖かいなぁ……


「ん? 何か言いましたすか?」


「ううん、何でもないわよ うひひ」









「よいっしょっと……ここら辺だったら人通りも少ないですし、大丈夫でしょう」


「やー、どーもどーも」



















「……」




「……」




「……」










「ねぇ、かげろーくん」


「なんすか?」



























「……あ、あれ……
 かげろーとキュウコンじゃないですか?」


「!
 隠れるわよ」


「へっ、わわ、ちょっと待って下さいよ」









「……かげろーがキュウコンをおんぶしてるわね」


「怪我でもしたんでしょうか……?」


「かげろーなんかが介抱できるのかしら」


「あはは、ちょっと難しいかもしれませんね」









「……ん?」


















































「ああああああ、あれあれあああれあれれれ、あれは!!!!!
 ききききききき、きき、き、ききき、キス!?」


「……」


「ちょ、らいち!? らいち、大丈夫ですか、らいち!?」



「……」




どさっ




「ああ、らいち!? らいちが倒れた!! だ、誰か救急車を――」














































「……という夢だったのさ」


「勝手に夢落ちにしないでください!!!」


「しかし、こんな夜遅くまで一体何してたのよ?  ぜるるが寝てるんだから静かにしてよね」


「それは……」


「まあ、らいちに何かがあったってのはわかったわ」


「……」


「実は……」














「なるほど……。つまり……」


「つまり……?」


キュウコンが求婚したってわけね!! あははははは!!!!」


「真面目に話した僕がバカでしたよ……」








ガチャッ








「ただいま……」


「かげろー……。今日はいったいどこで何をしていたんですか?」


「……。
 別に……」


「ちょっと、きちんと答えてくださいよ」


「うるせえ……。俺のことは放っておいてくれ……」



















「一体全体何があったんでしょうか……」




「しっかし……」



















「なんだか酒臭いわねえ」




























その10へ続く







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